代謝学⑨ ~脂肪を燃やしすぎるとミトコンドリアの死亡をもたらす①~
~ミトコンドリアは、飢餓(糖の不足)時のストレス状況下で脂肪を嫌々利用する~
動物は、常に食糧(糖質)を摂取できるとは限りません。
長時間の絶食に耐えられるように、補助燃料として中性脂肪を蓄えられるようになりました。
中性脂肪は、図のように、3つの脂肪酸とグリセリンが結合したものです。
普段は、中性脂肪の形で代替燃料の脂肪を蓄えています。
ブドウ糖の供給源であるグリコーゲンが尽きると、中性脂肪が分解されていきます。
中性脂肪は、グリセリンと3つの脂肪酸(遊離脂肪酸)に分解されます。
脂肪酸は、ベータ酸化されてアセチルCoAとなります。
再三になりますが、動物が生きるエネルギー源(ATP)は、ブドウ糖(グルコース)を出発点とする化学反応でしか合成できません。
ブドウ糖-解糖系-TCA回路-電子伝達系
の回路です。
脂肪酸がベータ酸化されて産生されたアセチルCoAは、この反応路のTCA回路の部分から「割り込む」ことができます。
ただ、大量のアセチルCoAだけでは、TCA回路は効率よく回りません。
TCA回路に入っていくには、クエン酸になる必要がありますが、その時にオキザロ酢酸が「同量」必要になります。
長時間の絶食により肝臓で脂肪酸から大量のアセチルCoAができると、TCA回路で処理できなくなります。
このアセチルCoAは、ケトン体に変換され、肝臓から血中に出され、他の組織でアセチルCoAとなって利用されます。
脳は、糖がない状態のとき、嫌々ながらケトン体を利用します。
大量のエネルギーが必要とされ、酸欠に弱い脳でケトン体を利用し続けるのはとてもリスクの高い代謝形態です。
対して、糖(ブドウ糖)から出発すると、ピルビン酸のところで二手に分かれて、オキザロ酢酸を作ることができるので、TCA回路を空焚きすることなく効率よく回路を回すことができます。
糖を利用したエネルギー産生は、とても効率が良いことがわかります。
呼吸商を見てみます。
脂肪を燃やすには、二酸化炭素に対して、より多くの酸素を必要とします。
脂肪を燃焼し続けると、組織は酸欠を起こしてきます。
糖が不足している場合、解糖系も使えず、脂肪を嫌々燃やしている心筋には、低酸素はエネルギー産生ができずに致命的になります。
酸素を運ぶヘモグロビンは、組織で酸素をヘモグロビンから手放すには、二酸化炭素の濃度が高い必要があるからです。(ボーア効果)
二酸化炭素濃度が高くなると、酸素乖離曲線が右方移動して酸素が供給されやすくなります。
https://note.com/liftingtheapex/n/n26f22770f6e2
ミトコンドリアでのエネルギー産生経路の最終段階の電子伝達系で、電子の処理に酸素が必要になります。
しかし、低酸素の状態では、処理できない電子が漏れ出してしまい、この過剰な電子が鉄とPUFAとの反応で猛毒のアルデヒドを産生し、ミトコンドリアを死に至らしめます。