「RAGE(AGEs受容体)に結合したアルグピリミジン(APMD)がオートファジーと細胞周期を調節し、歯周組織破壊を引き起こす」
「Argpyrimidine bonded to RAGE regulates autophagy and cell cycle to cause periodontal destruction」
という、9月27日掲載の論文から。
(J Cell Physiol. 2022 Sep 27. doi: 10.1002/jcp.30886.)
上記論文から、
APMDは、アルギニンとメチルグリオキサール(MGO)が結合した、終末糖化産物(AGEs)の1種です。
アルグピリミジンによって、歯周靭帯細胞 Periodontal ligament cells (PDLC) の細胞が弱り、マトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)-2、MMP-9、MAPK、およびNF-κB経路の炎症反応系ネットワークが活性化されました。
ラットの歯周モデルでは、APMD が歯槽骨吸収を誘発し、炎症性浸潤を増加させ、RAGE と PI3K を介してコラーゲン線維を分解することが確認されました。
この研究は、APMD が RAGE に結合して、PI3K/AKT/mTOR 経路を介して PDLC のオートファジーと細胞周期を調節し、それによって歯周組織破壊を促進するということを示しています。
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、コラーゲンなど細胞外マトリックスをはじめ様々なタンパク質を分解する酵素です。
メチルグリオキサール(MGO)は、解糖系における非酵素的代謝物であり、この濃度は糖尿病や腎不全患者において血液や組織中で上昇しているといわれており、反応性が高く、終末脂質過酸化物(ALEs)や終末糖化産物(AGEs)の前駆体です。
MGOが代謝されると、D-乳酸となり、D型は肝臓で代謝されにくく、D型よりも細胞毒性が強い乳酸です。
(崎谷博征著「慢性病は現代食から」「自然治癒はハチミツから」参照)
体内でMGOが産生される状況とは、
ミトコンドリアでの糖のエネルギー代謝がブロックされ解糖系が過剰に活性化した状態(糖がTCA回路に入れない状態)、あるいは、リポリシス(脂肪分解)によって増加するグリセルアルデヒド3リン酸の過剰供給によって産生されます。
(Life Sci. 2011 Sep 26;89(13-14):485-90.)
(崎谷博征著「自然治癒はハチミツから」より)
まとめると、糖の不足による低血糖や、PUFA(多価不飽和脂肪酸)などシックネスサブスタンスにより糖の代謝経路が障害されることにより、ミトコンドリアのTCA回路が脂質によって回り、TCA回路の燃料になる遊離脂肪酸が大量に血中に放出され、この遊離脂肪酸の中のPUFAが、脂質過酸化反応による終末過酸化物となり、これが即時に大量に産生される結果、MGOができる状況となります。
このMGOにより、APMDが産生され、炎症が活性化され、歯周組織が崩壊していく一経路が、この論文によって示されています。
PUFA:多価不飽和脂肪酸 - Wikipedia
PUFAを代表とする、糖をミトコンドリアで利用できなくするシックネスサブスタンスたちが、この経路以外にも様々な反応によって、歯周病も代謝の異常によって(宿主要因によって)悪化していきます。