代謝学⑩ ~脂肪を燃やしすぎるとミトコンドリアの死亡をもたらす②~
~脂肪燃焼は低酸素で死亡に至る~
飢餓状態、つまり血液中の糖が少ない状態のときに、細胞では糖の代わりのエネルギー源として、脂肪を取り込み、ミトコンドリアで燃焼させて生きていく上で必要なエネルギー(ATP)を作り出します。
基本的に糖しかエネルギー源にできない脳や赤血球のために、アミノ酸から糖を作り出す「糖新生」を、脂肪酸から産生したATPを使って、わざわざエネルギーを使って糖を作り出しています。
つまり、砂糖(グルコース+フルクトース)を制限しても、砂糖を絶対に必要とする細胞もあるので、わざわざ体の構成材料である(本来は燃料ではない)タンパク質(アミノ酸)を、体を破壊して「糖(グルコース)」を作り出す(体の構成成分であるタンパク質を砕いてアミノ酸を取り出す)という、細胞にはとてもストレスのかかることをやっています。
(ちなみに、グルコース単独よりも、フルクトースと併用のほうがエネルギー産生効率が高いことがわかっています。崎谷医師の著書を参照ください。)
前回の内容で、脂肪酸をTCA回路で回すと産生される二酸化炭素より酸素供給量が上回ることを書きました(呼吸商を参照)。
https://blog.hatena.ne.jp/mdc4555/matsuodental.hatenablog.com/edit?entry=4207112889910100540
SPO2というヘモグロビンの酸素飽和度を測る機械が、このコロナ禍で有名になりました。
呼吸で酸素を肺に取り入れますが、肺で吸った酸素は、血液の中の赤血球にあるヘモグロビンに乗せられて酸素を必要とする組織に運ばれ、細胞に酸素を渡し、細胞から排出された二酸化炭素は静脈血で、肺から排出されます。
https://www.kango-roo.com/learning/1617/より
このヘモグロビンですが、ボーア効果といって、酸素を下すときにその場の二酸化炭素が少ないと、酸素を下ろしてくれません。
https://blog.hatena.ne.jp/mdc4555/matsuodental.hatenablog.com/edit?entry=4207112889910100540
なので、脂肪酸を燃やすと、酸素の消費量より、二酸化炭素の産生量が少ないために、だんだんと低酸素状態となっていきます。
これで一番危ないのが、心臓です。
心臓は普段でも糖が少ないと嫌々ながら脂肪酸を燃やして、働き続けています。
酸素が少なくなることは、脂肪を燃やせなくなり、この状態で糖がないとエネルギーが枯渇し心筋は死んでしまいます。
脂肪はあくまで代替のエネルギー源です。
生命活動の維持には、糖が絶対に必要です。
代替エネルギー源である、脂肪を燃料に使い続けることは、細胞の機能と構造をゆがめていきます。
この「脂肪の燃焼」が、病気の代謝状態のベースとなります。