代謝学⑧
~細胞にとって生死にかかわる最大のストレスは、糖が不足する「飢餓状態」~
動物が生きていくためには、グルコースを出発点とする「解糖系、TCA回路、電子伝達系」の反応が滞りなく行われることが、「絶対に必要な」条件です。
この「絶対条件」を脅かす(細胞の生死を分ける)のは、
①酸素の不足(窒息)
と
②餌(燃料)の不足(飢餓)
です。
息を止めれば苦しくなるので、①の酸素不足は感覚的にも理解できます。
では、②の餌(ミトコンドリアの燃料)の不足はどうでしょうか?
生きていく上で絶対に必要なエネルギー(ATP)を得るためには、「解糖系、TCA回路、電子伝達系」の反応が滞りなく行われることが必要で、この反応の出発点は、「ブドウ糖(グルコース)」でした。
よって、細胞にとって「飢餓」の始まりは、血液中のブドウ糖(グルコース)の不足です。
この血液中のブドウ糖の不足(低血糖)は、細胞にとっては「飢餓」状態になり、細胞にとっては、窒息と並ぶストレスとなります。
ですので、低血糖に備えて、動物の体には補助の燃料を備えるシステムがあります。
グリコーゲン
と、
です。
低血糖に備えて(長時間の糖の絶食)、肝臓と筋肉に余ったブドウ糖(グルコース)を蓄えています。
これが、グリコーゲンと呼ばれる、ブドウ糖の貯蔵庫です。
筋肉に貯蔵されたグリコーゲンは、筋肉が自らのために使います。
肝臓に貯蔵されたグリコーゲンは、低血糖時に他の組織にブドウ糖を供給するために使われます。
特に、ブドウ糖をほぼ唯一のエネルギー源としている、脳や赤血球に対して肝臓のグリコーゲンは重要な供給源になっています。
ただ、現代人は、このグリコーゲン貯蔵量がとても少ないといわれています
肝臓は解毒器官でもあります。
現代人は、様々な化学物質や、重金属などで肝臓の力がとても弱っています。
食事からも大量の化学物質が入り込み、肝臓で四六時中解毒処理をしなければならないため、大量のグリコーゲンを貯蔵しておく余裕がありません。
(現代人のグリコーゲン貯蔵量は、数時間分しかないといわれています。)
はやりの糖質制限や、朝食を抜いたりするプチファスティングなどで普段の糖の摂取量が少ないと、「余り」のブドウ糖がないために、貯蔵するブドウ糖(グリコーゲン)を作る余裕もありません。
糖の摂取を嫌う現代人は、常にブドウ糖不足の「飢餓」状態なので、細胞のミトコンドリアは、エネルギー産生の多くを、脂肪やアミノ酸(タンパク質)の「代替」燃料に頼らざるを得ません。
ミトコンドリアが代替燃料に頼るエネルギー代謝は、常にストレス状態(飢餓ストレス)にあるということであり、健康の代謝状態ではありません。
これは、細胞にとっては、病気の代謝状態なのです。