「母牛はわが身を削って子牛を出産する~牛伝染性リンパ腫と分娩との関係,周産期に疾病が多発するメカニズムの一端を証明~(獣医学研究院准教授今内覚)」
と
歯周病との関係
「毎月、生理周期に合わせる感じで歯肉が腫れる」方からの、一考察。
今年に発表された論文で、北海道大学の獣医学部での研究で面白いものがありました。
「ウシ白血病ウイルス感染牛における分娩中のプロスタグランジンE 2を介したエストラジオール誘発性免疫抑制」
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0263660
エストロゲン(エストラジオール)は、PGE2シグナルを介して細胞性免疫応答を抑制することを解明しました。
牛の研究ですが、今内先生は人への応用の可能性を示しています。
女性と歯周病というと、女性ホルモンといわれるエストロゲンとの関係でしょう。
エストロゲンは、ミトコンドリアの糖のエネルギー代謝を障害するストレスホルモンです。免疫も抑制するために、様々な内因性、外因性の「炎症ゴミ」に対処できなくなります。
健康で、細胞の糖のエネルギー代謝が十分であれば、歯周病原菌由来の毒性にも炎症をおこさず対処できます。
細胞の糖のエネルギー代謝が低下すると、細胞自身も炎症性物質を産生したりするために外敵に対処できなくなります。
さらに、長期の糖質制限では、血糖を上げるためにつねに糖質コルチコイドが体内で産生され、それに伴ってアロマテースというエストロゲン産生酵素も活性化されているために、長期のステロイド作用とエストロゲンによる免疫抑制が自然に起きています。
上記の研究で、エストラジオールから誘導されたPGE2(プロスタグランジンE2)とは。
「プロスタグランジンE2(英: Prostaglandin E2, PGE2)は生理活性物質であるプロスタグランジンの一種であり、PGE受容体を介して発熱や破骨細胞による骨吸収、分娩などに関与している。医薬品(ジノプロストン)としては陣痛促進や治療的流産に用いられる。」
ウィキペディアより引用
PGE2は、炎症を起こし、骨を破壊する作用があります。
まさしく、歯周病の病態と関連しますね。
抗生物質でたたいても、自分の細胞自身が炎症性物質を出しているために、3日で炎症が収まらず炎症状態が続きます(慢性化)。
エストロゲンは女性ホルモンといわれていますが、男性でもストレスでしっかり産生される、ストレス性ホルモンに分類されるホルモンです。(パレオ協会編「ホルモンの真実(エストロゲン)」参照)
エストロゲン自身でも、歯周組織の作用として、エストロゲン作用が低レベルであれば歯槽骨破壊を、高レベルであれば歯肉炎を促進しやすいことが示されています。
(Odontology. 2020 Apr;108(2):153-165. doi: 10.1007/s10266-019-00439-1. Epub 2019 Jul 3. Estrogen signaling impacts temporomandibular joint and periodontal disease pathology)
植物性エストロゲン、特に大豆に含まれるイソフラボンは、、哺乳類のエストロゲンである17β-エストラジオールと構造が類似していて、エストロゲン作用をします。
薬にも、作用・副作用があるように、すべての物質には、良い面と悪い面があります(本来は良い悪いもなく、決めているのは自己都合ですが)。それを決めているのは、自身の細胞環境です。
健康に良いものという思い込みで、細胞環境を悪くしてしまうことが多々あります。
ご自身の症状から判断して、見直してみましょう。
この研究から読み解く、歯周病への対処は。
まずは、口腔内のバクテリアの数を減らしましょう。
プロフェッショナル、セルフでの口腔ケア。
エストロゲンの過剰な作用を減らしましょう。
PUFA断ち。植物性エストロゲンをできるだけ避ける。果物やハチミツをしっかり摂る。
血糖値を維持して、糖のエネルギー代謝を上げて、エストロゲン作用を減弱しましょう。
ナイアシドアミド、カフェイン、ビタミンA、Eの摂取。(パレオ協会基礎医学より)。
抗エストロゲン作用をするのが、プロゲステロンという、保護ホルモンです。
LDLコレステロールから産生されます(LDLコレステロールは、実際は「善玉」コレステロール)。
甲状腺ホルモンが必要とされます。
(J Endocrinol. 1998 Sep;158(3):319-25. doi: 10.1677/joe.0.1580319. Thyroid hormone stimulates progesterone release from human luteal cells by generating a proteinaceous factor)