代謝学15 ~呼吸にも糖が不可欠~
<赤血球の自己犠牲は、糖(ブドウ糖)があって成り立っている>
細胞に酸素を届けて、細胞内のミトコンドリアが呼吸をしてエネルギーを作り出すのに、赤血球は絶対に必要な血球です。
赤血球は、隅々の細胞に酸素を届けるために、自ら酸素を消費しないように、自らのミトコンドリアを捨てます。ほかに、核(遺伝子がある場所)や、粗面小胞体(タンパク質を合成する場所)などの細胞内小器官といわれるものも排除しています。
(正確には、非対称性細胞分裂をします。細胞分裂をするときに、片方だけの分裂細胞に、核、ミトコンドリアなど小器官が移動します。その後にこの核がある方の分裂細胞は、免疫の食細胞に貪食されてなくなります。残った方の分裂細胞は、赤血球として機能します。)
赤血球は、エネルギーを解糖系のみに依存しています。
解糖というぐらいですので、「糖」のみエネルギーにできるということです。
酸素を運搬するだけの「箱」に思われがちな赤血球ですが、赤血球の大きさよりも細い毛細血管を通る際には、通りやすくするために自らの形を能動的に変形させています。
これには、筋肉と同じように、エネルギーが必要となります。
解糖系では少量しかATP(エネルギー)ができませんが、この貴重なATP(エネルギー)を、他の細胞のミトコンドリアに酸素を供給するために使用しています。
赤血球で運搬した酸素ですが、抹消で酸素が必要な組織で「荷下ろし」をしなければなりません。
ここでも、効率的に荷下ろしをするのに、「糖」を必要とします。
解糖系をまっすぐ進むと、1,3DPGの後に2個のATP(エネルギー)ができますが、わざわざ赤字の方に迂回する経路があります。この経路ではATPは作られません。
が、その代わりに大事な物質2,3ビスホスホグリセリン酸を生成します。
これは、ヘモグロビンからの酸素の「荷下ろし」をしやすくする物質です。
酸素解離曲線の右方偏位とは、酸素の荷下ろしがしやすくなるということです。
荷下ろしを助けてくれる(解離曲線の右方偏位)物質があります。
それは、ミラクルホルモンとも呼んでいますが、「二酸化炭素」です。
呼吸商のところでも書きましたが、糖は最も効率よく二酸化炭素を産生できます。