TA値以外にも、はちみつにはもともと抗菌作用など素晴らしい効用があります。
近代工業化社会以前は、ハチミツは自然界から得られる、唯一の糖の、濃縮物質であったので、人々の生活においてとても重要な役割をしていました。考古学的証拠から、石器時代の人々はすでに蜂蜜を含むミツバチ製品を収穫していましたと考えられています。
(Honey compositional convergence and the parallel domestication of social bees. Scientific reports 2022Oct31 Vol. 12 issue(1))
ハチミツの組成です。
良質なハチミツは、ショ糖(果糖とブドウ糖が結合した2糖類)がごくわずかで、フルクトース(果糖)、グルコース(ブドウ糖)の単糖類が豊富で、特に脂肪がフリーです。
糖のエネルギー代謝を回すのに必須のミネラル、ビタミン類も含まれています。
(崎谷博征・有馬ようこ共著「自然治癒はハチミツから」より)
TA値でのPA(過酸化物活性)の抗菌性以外にも、NPA(非過酸化物活性)の要素でもある高い単糖類の濃度と高いpH(酸性)にこそ、ハチミツのすぐれた抗菌作用があるともいえます。
むし歯菌や歯周病菌は、バイオフィルムを形成して害を与えますが、はちみつはバイオフィルムを阻害します。
(Pharmaceutics. 2022 Aug 10;14(8):1663. doi: 10.3390/pharmaceutics14081663.
Honey: An Advanced Antimicrobial and Wound Healing Biomaterial for Tissue Engineering Applications)
(バイオフィルムとは:https://systema.lion.co.jp/shishubyo/glossary/b_biofirm.htm)
ちなみに、ハチミツは医療でも注目されています。
ハチミツは、現代医学が出現するまでは傷を治療するために使用されていました。抗生物質に対して耐性のある菌が増えているため、世界的な抗生物質耐性の増加により、再びハチミツの抗菌力に注目が集まっています。ハチミツは現在、抗菌作用、創傷治癒で治療に用いられています。抗生物質耐性株やバイオフィルムを含むグラム陽性菌とグラム陰性菌の両方が、ハチミツによって阻害されることが示されています。
エナメル質は、pH値5.5(酸性)以下で、溶けるとされています。
(https://weathernews.jp/s/topics/202209/080155/より引用)
ハチミツの低いpHは、抗菌作用はありますが、歯を溶かしては困ります。
では、ハチミツでエナメル質は溶けるのでしょうか?
ハチミツの酸性度は低いですが、エナメル質は溶かさなかったとの報告があります。
これは、はちみつに含まれるミネラル成分などが、エナメル質の脱灰を防いだ可能性が示唆されています。
(Archives of Oral BiologyVolume 39, Issue 2, February 1994, Pages 147-153. The effect of honey on human tooth enamel in vitro observed by electron microscopy and microhardness measurements)
ハチミツの低いpHは、口腔細菌の増殖を抑える効果があるが、エナメル質の脱灰を起こさなかったことが示されています。
(Impact of honey on dental erosion and adhesion of early bacterial colonizers. Sci. Rep. 2018, 8, 10936.)
矯正治療中は、ワイヤーなど矯正装置によって、汚れがとてもたまりやすいこともあり、むし歯と歯肉炎が起きやすい状態になります。
「Effect of honey in preventing gingivitis and dental caries in patients undergoing orthodontic treatment」という報告では、はちみつのう蝕と歯肉炎の予防効果が示されています。
(Saudi Dent J. 2014 Jul;26(3):108-14. doi: 10.1016/j.sdentj.2014.03.001. Epub 2014 Apr 19.)
混ざり物のない良質なハチミツには、むし歯や歯周病を防ぐ効果が、そのほかの研究報告で示されています。